💻「100ビットコイン当選」“人間心理を利用した古典的詐欺”

技術が進化しても、詐欺の本質は「人の心」

こんにちは、リョウです。
私は社内SEとしてAIツールの導入やシステム開発を担当しています。

AIの進化により、多くの仕事が効率化される一方で
「詐欺の手口」もまた進化のスピードを上げています。

最近よく見かけるのが、「100ビットコイン当選」というメッセージ。

SNSやメールで「あなたは選ばれました」「受け取り手続きを完了してください」といった通知が届く、あの類のものです。

一見すれば、最新技術を使った華やかな投資話のようですが

中身は非常に古典的な“心理操作型ビジネス詐欺”。

今回は、その構造を“ITと心理の両面”から紐解いていきます。

100ビットコイン＝約10億円。冷静に考えれば破綻している

ビットコインの相場は現在、1枚あたり約1,000万円前後。
つまり、100ビットコインは約10億円。

10億円という金額を個人に「当選」として配る企業や団体は存在しません。

仮に本当に配るなら、ニュースで取り上げられているはずです。

それでも人が信じてしまうのは、数字のインパクトに脳が麻痺するから。

これは心理学でいう「スケール効果」と呼ばれるもので
あまりにも非日常的な数字を見せられると
人は思考を一瞬止めてしまう傾向があります。

詐欺の仕組みは「マーケティングファネル」と同じ構造

この詐欺の面白い（いや、恐ろしい）ところは
まるでビジネスのマーケティングファネル（集客→教育→販売）そのものだということ。

🧩 ステップ①：集客フェーズ

SNS広告・メール・DMで「当選通知」をばらまく。
ここで大切なのは「ターゲットの選定」。
詐欺グループは、投資・副業・仮想通貨関連の投稿をしているユーザーをAIでスクリーニングしています。

🧩 ステップ②：信頼構築フェーズ

登録フォームにアクセスすると、有名企業ロゴやAIチャット風の画面が表示されます。
「あなた専用のウォレットを作成します」「セキュリティ認証を行います」などの文言で信頼を演出。
これがいわば“教育段階”です。

🧩 ステップ③：マネタイズフェーズ

「手数料」「税金」「送金システム利用料」などの名目で支払いを要求。
支払うたびに「あと少しで完了します」という自動メッセージが届き

気づけば数十万円を失っている――という流れ。

この3ステップを自動化している詐欺グループもあり
まさに「AI＋心理マーケティング」を悪用した構造です。

「AI生成サイト」が詐欺のリアリティを加速させている

最近の詐欺は、AI生成技術の進化で一段と巧妙化しています。

• 偽のニュース記事を生成して、「当選キャンペーン実施中」と報道風に装う
• AI音声合成を使い、有名人の声で「おめでとうございます！」と案内する
• ディープフェイク動画で著名人が宣伝しているように見せかける

つまり、テクノロジーが進化すればするほど

「見た目では本物と偽物を区別できなくなる」時代が来ているのです。

AIの導入を進める立場として
私は便利さと同時に“悪用リスク”を痛感しています。

「なぜ自分が？」と思う人ほど狙われる理由

詐欺師が狙うのは、貧困層ではなく

「少し余裕があり、向上心のある層」です。

これはマーケティングの原理と同じ。

行動力がある人ほど「新しいことに挑戦しよう」と思うため
「あなたは選ばれました」「先着限定」という誘い文句に反応してしまうのです。

特に30〜40代の会社員は

• 収入の伸び悩み
• 住宅ローンや教育費のプレッシャー
• 将来への漠然とした不安
  という3つの要因で“心理的な隙”が生まれやすい。

この層は詐欺にとって、最も効率の良いターゲットです。

被害の裏にある“人間のアルゴリズム”

AIを扱う身として言わせてもらうと
詐欺も人間の“思考アルゴリズム”を正確に読んだプログラムのようなものです。

1. 希少性を提示（限定・当選）
2. 承認を与える（あなたは特別）
3. 行動を急かす（今すぐ・残り3名）

この3ステップはまさに行動経済学のテンプレート。

冷静に見れば矛盾だらけでも、人は「感情優先」で動いてしまう生き物なのです。

現実の被害データ

警察庁の発表によると
「暗号資産関連詐欺」の相談件数はここ数年で急増。

2023年には過去最高を更新し、被害総額は200億円を超えたとも言われています。

そして、その大半が「SNSやメールをきっかけにした勧誘」。
つまり、“スマホの中にいる詐欺師”が主流になっているのです。

もしも被害に遭ってしまったら

被害を受けた場合は、以下の手順を踏みましょう。

✅ 1. 支払いを止める

クレジットカード会社・銀行に連絡して、即時停止。
送金が完了していても、早ければ補償対象になるケースがあります。

✅ 2. 証拠を残す

LINEやメール、振込履歴のスクリーンショットを保存。
後から証拠を求められる場合があります。

✅ 3. 相談する

• 消費者ホットライン（188）
• 各都道府県の警察サイバー犯罪相談窓口

一人で抱え込まず、「早めに相談」が最も大切です。

私自身の失敗と、そこから得た教訓

私は以前、副業の情報を調べすぎて行動できなくなった経験があります。
「慎重になること」と「疑いすぎて動けなくなること」は紙一重。

でも、今回のような詐欺を見ていると
「行動する前に1回立ち止まる癖」がどれほど重要か痛感します。

• これは自分の人生に必要な情報か？
• 公式の発表か？
• 第三者の確認は取れているか？

たった3つの質問で、多くのリスクは避けられます。

「AIがあれば安心」ではない

AIを活用すれば情報収集は速くなります。
しかし同時に、「AIを悪用した詐欺」も増えていくのは確実です。

結局、最後に守ってくれるのはAIではなく、自分自身の判断力。

AIに依存せず、“人間としての直感と慎重さ”を磨くことがこれからの時代に求められるスキルだと思います。

冷静さが最大の防御になる

• 「100ビットコイン当選」は100％詐欺
• AIや有名人の名前を利用し、リアリティを演出
• 被害者の多くは向上心が高く、まじめな層
• 最後に残るのは“判断力と冷静さ”

リョウからのメッセージ

私たち40代は、技術の変化を肌で感じながら生きてきました。

でも、テクノロジーがどれだけ進化しても

人間の「欲」と「不安」は変わらない。

だからこそ、冷静に分析し、正しいリスク感覚を持つことが
これからの時代の最大の武器になります。

「AIを使う側」になるのか、「AIに騙される側」になるのか。

その違いを分けるのは、たった一つ――思考を止めないことです。

👤 執筆：リョウ

「AIが進化しても、“判断力”は人間にしかない。」